コーヒーは焙煎することで、無臭の生豆がとても良い香りがするコーヒー豆に変化します。
焙煎はコーヒー豆を劇的に変化させるのでコーヒーができるまでの流れの中でも非常に重要なポイント。
そんな重要工程である焙煎について詳しく解説します。
焙煎とは?焙煎をする意味について
コーヒーの焙煎は奥が深く、焙煎によって様々なフレーバーを引き立てることが可能になります。
焙煎はコーヒーの味を決定づける上で非常に重要な工程となっています。
焙煎工程によって調整可能な要素
焙煎は単純に香りが豊かになるだけでなく、下記の三大要素を自由にコントロールすることが可能。
- 甘味
- 苦味
- 酸味
焙煎コントロールによって甘味が強く酸味は弱い味わいにしたり、甘味も酸味も両方味わえるコーヒーにすることも可能です。
コーヒーが出来るまでには数多くの重要工程がありますが、焙煎工程により多くの味を表現することが出来るため最も重要な工程とも言われます
ロースト・プロファイルとは
ローストプロファイルとは、複雑な条件下で行われる焙煎工程の設定値を記録したもので、焙煎業者はこのローストプロファイルに従い、条件を揃えることで同じ焙煎度合いを再現しています。
コーヒーの焙煎は各業者にそれぞれが独自のローストプロファイルを持ち、様々なやり方で焙煎を行っています。
条件を記録し、微調整を繰り返し理想の仕上がりを追い求めていきます。
焙煎で重要なのは時間と深さ
焙煎でもっとも重要になるのは時間と深さです。
焙煎度合いでは判断できない
コーヒーは『中煎り』『深煎り』などの焙煎度合いで表されますが、それでは焙煎に要した時間と深さはわかりません。
見た目が同じ中煎りでも、『焙煎した時間』により味は大きく変化します。
焙煎時間による変化
焙煎時間が長くなることでコーヒーの水分量も減ります。
2,3分で素早く焙煎したコーヒー豆と、15〜20分かけてゆっくり焙煎したものでは水分量や重量に差が出ます。
時間をかけ丁寧に焙煎されたコーヒーは当然ながらその分価格も上昇します。
焙煎工程について
焙煎工程は大まかに分けて下記の5つに分けられます。
- 乾燥工程
- 豆の色変化
- 1ハゼ
- 焙煎の進行
- 2ハゼ
順番に解説していきます。
乾燥工程
コーヒーは脱穀の段階で乾燥されていますが、完全には乾燥しておらず7~11%程度の水分が残っています。
豆の内部に水分が残っているとコーヒーは茶色く色づかないため、生豆を焙煎機に入れ、熱で完全に水分を飛ばしていきます。
この工程は水分を飛ばすためだけであり、まだ色にも香りにも変化は現れません。
乾燥が不十分だと豆が均等に焙煎できなくなってしまうため、乾燥工程は非常に重要とされます。
豆の変色
完全に乾燥が終わると、徐々に豆の色が変化が表れます。
焙煎初期段階ではまだ豆の内部密度が高くバスマティ米やパンのような香りがします。
第1工程の乾燥が不十分だと表面だけ焙煎され、内部は十分に焙煎されずに不均等になってしまい味が落ちてしまいます。
チャフの除去
チャフとは生豆についている薄皮の事。
焙煎が進み、豆が徐々に膨らむことでチャフが剥がれていきます。
焙煎機の中の風によりチャフを剥がし、剥がれたチャフを回収します。
1ハゼ
焙煎のハゼというのは焙煎時に発生するパチパチ音からとられている。
焙煎が進行することで豆の内部で水蒸気とともに二酸化炭素などのガスが発生し、豆の組織が壊れハゼる音(パチパチ音)が発生。
このハゼが起こることで豆の体積は約2倍まで大きく膨張する。
1ハゼ後の焙煎進行
ハゼが起こってからは豆の温度上昇は緩やかになり、コーヒー豆の表面は十分になめらかになりほんのり艶が出てきます。
この段階でコーヒーの良い香りが発生してくるので、浅煎りなどの場合はここで終了することも多い。
焙煎を続ければ酸味が減り苦味が増えるため、焙煎を終了するタイミングが重要になってきます。
2ハゼ
更に焙煎が進行すると再びコーヒー豆がパチパチとハゼますが、1ハゼよりは小さく軽い音になってきます。
2ハゼが起こる頃には煎ったコーヒーの香りが強くなり、豆の油分が表面に現れツヤがでます。
ここまで焙煎を進めると酸味が消え苦味が強くなっており、エスプレッソ等で利用される極深煎りなどはここまでしっかりと焙煎を行いコクと苦味を出す事が多い。
コーヒーの焙煎度合いについて
コーヒーの焙煎は主に下記の3つの焙煎度合いで表されます。
- 浅煎り
- 中煎り
- 深煎り
焙煎度合いを更に細かく8種類に分けて表示しているコーヒーショップもあります。
コーヒーの焙煎度合いロースト8段階
コーヒーの焙煎度合いを8種類に分けて表すと下記のようになります。
- ライト・シナモンロースト:極浅煎り
- シナモンロースト:浅煎り
- ミディアムロースト:中煎り
- ハイロースト:中深煎り
- シティロースト:深煎り
- フルシティロースト:深煎り
- フレンチロースト:極深煎り
- イタリアンロースト:極深煎り
焙煎度合いは厳密に定められているわけではないので大雑把に表現している業者も多いです。
浅煎り(シナモンロースト)
焙煎工程で言う1ハゼの少し後に終了させると酸味がしっかりと残る浅煎りコーヒーになります。
最も浅い焙煎の『ライト・シナモンロースト』『シナモンロースト』などと呼ばれ、生豆の特徴を濃く引き継ぐため素材の質の良いスペシャルティコーヒーで利用されることが多い。
また、焙煎時間が短ければ短いほどカフェインの量が多くなります。
- 酸味が強い
- 甘味が強い
- 苦味が弱い
- カフェインが多い
中煎り(ミディアムロースト)
おそらく最もベーシックな焙煎は『中煎り』でしょう。
多くのレギュラーコーヒーで使用されています。
- 酸味が調節しやすい
- 甘味が調節しやすい
- 苦味が調節しやすい
もっとも味を調整しやすいのが中煎りだと言われています。
深煎り(シティロースト)
こちらも中煎り同様よく見かけますね。
しっかりと焙煎することでコクがひきたちます。
- コクが強い
- 苦味がある
極深煎り(フレンチロースト、イタリアンロースト)
焙煎工程で言う2ハゼまでいくと極深煎りの『フレンチロースト』や『イタリアンロースト』といったコクが深いコーヒーになります。
しかし、極深煎りともなると酸味や甘味が完全に飛んでしまいコーヒーの個性は消えてしまいます。
極深煎りはエスプレッソや比較的安いコーヒーに使用されることの多い焙煎方法。
- 酸味や甘味が無い
- コクが強い
- 苦味が強い
- カフェインが少ない
焙煎機の種類
コーヒー豆は脱穀された生豆の状態で輸入されてくるが、焙煎は消費国でされるのが一般的です。
焙煎から日が経てば経つほど劣化につながるので自家焙煎コーヒーとして焙煎から販売まで行うコーヒーショップも増えています。
焙煎機の種類は多々ありますが、よく使われる焙煎機は下記の4種類
- ドラム型焙煎機
- 流動床型焙煎機
- 接線型焙煎機
- 遠心型焙煎機
順番に解説します。
ドラム型焙煎機の特徴
ドラム型焙煎機はゆっくりと焙煎することが可能で、焙煎のプロに愛用されている事が多い焙煎機です。
熱したドラムを回転させながら焙煎するタイプで、豆が常に動いているため均等に焙煎しやすいのが特徴。
また、ドラムの熱や風量を調整しやすいという特徴もあり設定の幅も広くなっています。
- 均等に焙煎できる
- 調整の幅が広くプロが愛用
- じっくりと焙煎する事ができる
流動床型焙煎機
流動床型焙煎機とは、豆を回転させながら熱風を噴射する事で焙煎を行う、熱風式とも呼ばれる方式の焙煎機。
上記のドラム式焙煎機に比べると短期間での焙煎となり、焙煎時間が短く済み豆も大きく膨らむ傾向があります。
接線型焙煎機
ドラム型焙煎機と似ているが、こちらは内部にある突起により豆を均等にかき混ぜることが可能になっており、焙煎速度も早く、大量の豆を焙煎するのに利用されることが多い。
遠心型焙煎機
遠心型焙煎機は上記の接線型焙煎機以上に効率的です。
丸い窯に大量のコーヒー生豆を入れ、回転させた窯を熱することで焙煎を行う。
遠心力により窯のフチまで飛ばされた豆は跳ねて再び中央に戻される事で効率よく焙煎を行うことが可能です。
このような大量の豆を焙煎するのに特化した焙煎機は短時間での焙煎を得意としており、味よりも量を重視するインスタントコーヒーなどに多く用いられています。
焙煎による甘味(糖質)変化
コーヒーの生豆には多くの糖分が含まれています。
生豆に含まれる糖は焙煎により強く変化し、以下の化学反応を引き起こします。
- カラメル化反応
- メイラード反応
カラメル化反応
豆の水分が蒸発すると甘い香りのするカラメル化を起こす事があります。
カラメル化を起こせば甘くなるというわけではなく、甘い香りしてもカラメル化を起こすことで豆の甘味が下がり、苦味が増す場合も多い。
メイラード反応
コーヒー生豆に含まれるタンパク質と糖が反応しメイラード反応を起こす事もあります。
メイラード反応は褐変反応とも呼ばれ、食品加工などでもよく使われています。
焙煎による酸味の変化
コーヒーを焙煎する前の生豆には多くの種類の酸が含まれています。
しかしこの酸はすべてが良いフレーバーではないため、焙煎により良い酸を残し風味を損なう酸を取り除くことが重要とされます。
ポリフェノールを含むクロロゲン酸
クロロゲン酸とはポリフェノールを含む酸で、コーヒーの生豆に多く含まれています。
クロロゲン酸は生活習慣病などの予防に効果的とされる健康要素も強く、味を楽しむ酸味としてだけでなく、健康向上としても注目されています。
焙煎時間によりクロロゲン酸は減少
クロロゲン酸は比較的熱に強く中煎り程度までは多くは減少しないものの、深煎りともなると大きく減少し、極深煎りとなるとほぼ消失してしまう。
シュリンケッジといわれる焙煎による水分の減少率と比例してクロロゲン酸が減少していきます。
焙煎による香りの変化
コーヒー聞くだけでもう香りがイメージできるくらいに印象深い良い香りがしますよね。
あのコーヒーの良い香りは下記の3つのどれかの反応にて発生しています。
- カラメル化反応
- メイラード反応
- ストレッカー分解反応
カラメル化反応とメイラード反応は前述しましたとおり、糖に反応して起きる現象です。
ストレッカー分解とはアミノ酸に反応して起こる現象の事で、食品が加熱されることによる成分間反応による香りの事。
800種類を超える香り成分
上記の焙煎熱による3つの化学反応によって、800種類を超える揮発性の香り成分が発生します。
コーヒーの香りはコーヒーの品種や焙煎時間によっても大きく変化します。
多種多様な香りが楽しめます。
焙煎時の温度
焙煎時の温度はハッキリとした決まりがあるわけでなく焙煎業者ごとにそれぞれの方法で行っています。
しかし、どの業者もしっかりと温度変化をローストプロファイルとして記録しています。
焙煎は80度〜200度の間で、徐々に温度を上げて行き、焙煎終了後に急激な冷却を行う。
冷却
冷却をする理由は主に下記の2つが挙げられます。
- 予熱で焙煎過多になるため
- 不快な味が発生するのを防ぐため
必須とされる作業だが、冷却方法によっては味が劣化することもあります。
焙煎後の冷却方法
冷却方法は焙煎する豆の量によっても変わってきます。
焙煎した豆が少量の場合の冷却方法
豆が少量の場合は冷却トレーを利用することが多い。
空気を急速に吸引し冷却を行います。
冷却トレーを利用した冷却方法は品質に影響なく急速に冷やすことが可能とされています。
焙煎した豆が多量の場合の冷却方法
一方、焙煎した豆の量が大量の場合は冷却トレーでは冷却できないため、霧状の水を吹きかけて冷却を行う。
この方法はコーヒーの劣化につながることもあり、水の量など慎重に調節する必要がある。
冷却による品質劣化
上記の多量の場合に利用される霧状の水を吹きかける冷却方法だが、味の劣化につながるとわかっていながら多く水をかける業者もいます。
多く水を吹きかける事で焙煎後の豆に水分が含まれ、重量が増すためです。
品質が下がり、価格の嵩上げにもなるため発覚した際は信用を落とすことにもつながります。
コーヒー焙煎は奥が深く面白い
奥が深いコーヒーの焙煎について解説しました。
多くの要素が絡み合う焙煎は無限の可能性を秘めています。
焙煎度合いでコーヒーを飲み比べてみるのも楽しいですよ。
珈琲の味を決めるのは焙煎だけではない
コーヒーの生産において焙煎は非常に重要な工程ですが、そもそもの豆の品質や処理が悪ければ台無しです。
焙煎前の段階で、コーヒー豆の味はある程度決まってしまっています。
より美味しいコーヒーを求めるのであれば以下の工程を欠かすこともできません。
全部が揃った美味しいコーヒーは価格も高くなりますが、美味しいのでぜひ専門店でスペシャルティコーヒーを飲んでみてください。
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