イエメンのコーヒー 歴史や栽培環境について解説

イエメンは、世界で最も長い歴史を持つ商業的なコーヒー生産を行っている国の一つです。イエメンのコーヒーは、その独特な味わいと豊かな香りから多くのコーヒーファンに愛されています。

エチオピアからイエメンに伝わったコーヒーは、手間がかかるが確実に特別な魅力があるとされ、何世紀にもわたって高い需要が続いています。

イエメンの農業はやや特殊で、水資源が不足しているため、コーヒーの木を健康に保つためには漸進的な整備が必要です。さらに、コーヒーの生産量が限られており、生産コストも比較的高いため、イエメン産のコーヒーはかなり高値で取引されています。本記事では、イエメンコーヒーの歴史や製法、副産物であるキシルについても解説します。

イエメンのコーヒー歴史

イエメンのコーヒー文化はどのように根付いてきたのか、歴史を簡単に解説します。

エチオピアからイエメンへ

イエメンは、世界でも有数のコーヒー生産国の一つであり、どの国よりも長い間、商用栽培を行ってきました。イエメンにおけるコーヒーの歴史は、エチオピアとの関わりに始まります。エチオピアは、コーヒーの起源地とされており、紀元前9世紀頃には既にコーヒーが存在していました。その後、エチオピアのコーヒーは、アラビア半島やペルシャに伝えられ、やがてイスラム教徒によってメッカに持ち込まれるようになりました。

イエメンにコーヒーを伝えたのは、おそらくエチオピアの一部族であるギディオン族だったとされています。彼らは、エチオピアの西部に住む人々で、コーヒーの栽培技術を持っていました。彼らは、貿易、もしくはエチオピアからメッカへ向かう巡礼者たちによって持ち込まれ、15〜16世紀にはイエメンに根付いたとされています。

モカという名前の由来

イエメン産コーヒーの輸出により、出荷港であったモカの名が世界に広まりましたが、この「モカ」という用語は、コーヒー用語の中で最も混乱を招くものとなっています。実際に、モカは、エチオピア南部の町モカを起源とするコーヒーの品種でもあります。

しかし、イエメンのモカは、コーヒー用語としては、イエメンの出荷港を指す名称として使用されています。イエメンのコーヒーは、モカ以外にも、サナア、ハラジ、イブブなど、様々な地域で生産されていますが、世界中のコーヒー愛好家たちからは、モカという名前で親しまれています。

イエメンのコーヒー栽培環境

イエメンのコーヒー生産は、特殊な生産方法が用いられています。生産者は、高地の斜面でコーヒーの木を育て、手作業で収穫します。このため、一般的なコーヒー生産方法と比べて収量が少なく、手間がかかることが特徴です。

また、イエメンのコーヒーは、品種や栽培方法、収穫から精製までの一連の過程が特殊であるため、特別な魅力があります。イエメンのコーヒーは、世界的に高い評価を受けていますが、この特別な生産方法のため、コーヒー豆の生産量は限られており、生産コストも比較的高くなっています。

イエメンは農耕に適していない地域でコーヒー栽培が困難だった

イエメンは農耕に適していない地域のため、様々な困難がありました。

イエメンのコーヒー生産においては、いくつかの課題があります。その一つが、農耕に適した土地の不足です。イエメンの国土の3%しか農耕に適した土地がなく、その中でも高地の斜面に限定されています。また、水資源も不足しており、多くの生産者は地下水に頼っています。このため、枯渇が懸念されます。

さらに、イエメンの生産者は、生産に必要な機器や施設の整備が進んでいないため、労力を要する手作業が中心です。また、肥料の使用が少なく、土壌が痩せてしまうことも問題となっています。

これらの課題に対して、イエメンの生産者たちは、様々な取り組みを行っています。例えば、肥料の使用を促進するために、地元の有機農業団体と協力している場合があります。また、水利用効率を高めるために、灌漑システムの整備を進めている生産者もいます。

イエメンの生産者たちは、より効率的な生産方法を導入するために、さまざまなプロジェクトを立ち上げています。例えば、農機具の購入支援や農業技術の研修会などを行い、生産者の技術向上を支援しています。また、生産者同士が情報を共有し、互いに協力するための組織やコミュニティをつくる動きもあります。

イエメンの生産者たちは、自分たちの生産活動を維持するために、様々な課題に取り組み、努力しています。そのため、イエメンのコーヒーは、高品質かつ高価格な商品として市場で高い評価を受けています。

コーヒー生産の副産物「キシル」

コーヒーを生産する際の副産物として有名なキシル(Qesher、もしくはQ shr や Qishir とも書く）は、精製工程で除去されたコーヒーチェリーの殻を、焙煎せずに乾燥させたものです。

キシルの特徴

キシルは、コーヒーのチェリーから取り出される種子を精製する過程で生じる副産物のひとつで、コーヒー豆を焙煎する前に取り除かれます。そのため、キシルは独特な風味を持っています。

キシルの味わいは、果肉の甘さや酸味、香りが豊かで、軽い口当たりが特徴です。一般的に、キシルは、コーヒーの代わりの飲み物として、イエメンでかなり浸透しています。また、最近では、中米のコーヒー生産者たちも、キシルと同様の「カスカラ」を生産しようとしています。

キシルの利用法

キシルは、一般的には、コーヒーと同様に淹れて飲むことができます。茶葉と同様に湯を注いで淹れ、砂糖やミルクを加えることもできます。また、キシルを使ったシロップやジャム、菓子など、様々な料理に利用されています。

キシルは、コーヒー豆よりも価格が安いため、イエメンの人々にとっては、コーヒーを飲む際にコストを抑える方法としても利用されています。イエメンの家庭では、コーヒーと一緒にキシルを飲む習慣があるとされています。

イエメンのコーヒーまとめ

イエメンのコーヒーは、独特な味わいと豊かな香りが特徴の高品質な商品です。しかし、生産に必要な水資源が不足しているため、生産者たちは様々な課題に取り組み、努力しています。水資源の不足に加え、肥料や農機具の不足、乾燥の不十分さなど、多くの課題が生じています。しかし、生産者たちは、自分たちの生産活動を維持するために、様々な取り組みを行っています。